組織をテスト駆動で考える

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組織をテスト駆動で考える

エンジニアリングマネージャーとして組織やチームをシステムとして捉えるようになったとき、「人は組織の歯車」として道具的に捉えてしまう感覚に違和感を感じていました。

そんな中で、人を組織の「テスト」として捉える視点を発見しました。システムの中の部品ではなく、システムの外側からその振る舞いを検証する存在として考えるということです。

実践から生まれた視点

この発想に至るまでに、二つの重要な実践がありました。

一つ目は、プロダクト開発チームのサイクルをシステムとして捉え直す取り組みです。私たちは継続的デリバリーができる状態から、さらに市場インパクトを生むシステムへと進化させようとしました。プロダクト思考や仮説検証サイクル、ユーザー体験向上サイクルを取り入れ、デリバリーが確実に市場価値につながるようシステム全体をアップデートしていったのです。

二つ目は、生成AI時代のコーディング技術として、テスト駆動開発(TDD)や振る舞い駆動開発(BDD)を改めて実践したことです。Coding Agentに自律的に動いてもらうために様々な手法を実験する中で、人の役割がより上流の課題設定やアーキテクチャ設計に移行していくことを実感しました。そして、エンジニアには抽象化や言語化のスキルが求められることを実感しました。

これら二つの活動が結びついたとき、「人を組織のテストとして捉える」という視点が生まれました。ここでいう「テスト」とは、単にコードが正しく動くことを確認するものではなく、より良い設計を導くためのテストです。

検証する存在としての人

私が考える「テストとしての人」とは、違和感や衝動を起点にシステムとの不整合(Red)を検知し、自身やシステムをアップデートすることで整合(Green)へと導くことができる存在です。

ここで重要なのは「違和感や衝動を起点に」という部分です。これはAIや機械には持てない、人間固有のセンサーです。論理的に説明できないモヤモヤやハックしたくなる感覚。これこそが、システムの改善点を発見する最初のシグナルなのではないでしょうか。

Red/Greenが示す組織の健全性

実際の組織では、このGreen(整合)とRed(不整合)の状態はどのように現れるでしょうか。

例えば、プロダクトのKPIを見直したとき。今まで整合していたプロセスや個人の衝動に不整合が発生します。トラッキングの仕組みやチームのルーティンを見直す必要が出てきます。同時に、新しい目標に対してどう解釈すれば自分の衝動を乗せられるか、各メンバーが考え始めます。

この不整合(Red)から整合(Green)への変化のプロセスこそが、組織の成長そのものなのかもしれません。

システムを観測し、変革する立場

「人をテストと捉える」ことの最も重要な意味は、システムやルールは与えられるものではなく、自分たちで変えて良いものだと捉え直せることです。

人は組織というシステムを構成する要素ではありません。システムを観測・検証する立場にいて、組織のポテンシャルを引き出すために存在している。プロダクト開発で言えば、「市場インパクトを生み出すシステム」を外側から観測・検証し、より良い方向へ導く存在です。

この視点に立つと、自身の違和感や衝動を場に開きやすくなり、より対話的になることができます。

実際、私がエンジニアリングマネージャーとして、プロダクト開発サイクルというチームのシステムを図示し、その方向性を示したとき、メンバーそれぞれがどのサイクルに関心が高いのか、どこに寄与できるのかを考えやすくなりました。システム全体が健全な状態であるかを、チーム全体で対話できるようになったのです。

新しいメタファーの提案として

今回、「人を組織のテストとして捉える」という視点を提案してみました。まだ荒削りな考えかもしれませんが、このメタファーには組織を見る新しい可能性があると感じています。

この視点で考えると、人の役割の進化についても新しい見方ができそうです。ユニットテストレベルの仕事はAIやロボットに代替されていくでしょう。しかし、それによって人はより高次の整合性を検証する役割—インテグレーションテストやシステムテストのレベル—へと進化していくと考えることもできるのではないでしょうか。

引き続き、この視点から見えてくる組織の姿を探究し、共有していきたいと思います。