音楽から学ぶ相互応援という関係性

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音楽から学ぶ相互応援という関係性

私は著者の音楽のファンで、新しい本『歌う言葉 考える音ーー世界で一番かわいい哲学的音楽論』(ヤマモトショウ著)が出ると聞いて手に取りました。

歌う言葉 考える音ーー世界で一番かわいい哲学的音楽論

読みやすくいろいろと思考しながら1日かけて読んだのですが、作詞・作曲やプロデューサーとしての考え方に触れながら、音楽と人との関係について考えるのにとても良い本でした。

先週、自分の「ファシリテーション」について考える機会があり、人や組織のポテンシャルを引き出すとはどういうことか、という問いに向き合っていたところでしたので、今回はこの本を読みながら考えたことと、ファシリテーションについて振り返ったことをまとめてみたいと思います。

音楽における「良いもの」とは

「共感」とは何かについて、この本を読んでいて「自分が良いと思ったものを良いと思ってもらえること」ではないかと考えました。しかし「誰にとっても良いものは存在しない」ことと、良くないものについては客観的なパターンが存在していて「誰かが良いと思うものに良くないものの特徴を持つものはない」という話が興味深かったです。

音楽は明確な目的を持たなくても成立する、実用性から解放された純粋な表現です。客観的な評価指標がない世界で、インターフェースがシンプルだからこそ誰でも聴き手になりえる。それを良いと思うかは受け取り手に委ねられている。この関係性の中に「分からないを楽しむ」という音楽的な態度があり、正解がないからこそ対話が生まれる余地があります。

誰にとっても良いものは存在しないからこそ、私たちは自分のこだわりを大切にできる。そして、誰かが良いと思うものには価値があるからこそ、他者のこだわりを応援できる。この両方の視点が、相互応援の土台なのかもしれません。

アイドル文化が教える相互応援の形

アイドル文化もまた、「私たちは何を歌います」という自己言及型から「自分たちはこれが良いと思いますが、どうですか」という自己肯定感型へと変化してきたという視点も興味深かったです。本書では、現代は「自己肯定感」がキーワードになっており、そのような音楽は「本質的には応援ソングである」と述べられています。

ここには、アイドルは応援ソングを歌い、ファンは推しとして応援するという相互的な応援関係が成立しています。アイドルはファンの存在によって自己肯定感を得て、ファンはアイドルを通じて自分自身も肯定される。求められているのは共感であり、その共感によって生まれる自己肯定感は、人と人との本質的な関係性を示しているように思います。

応援と私のファシリテーション観

私が大切にしている価値観は「誰かのこだわりが他の誰かに必要とされる」というものです。誰もが持つこだわりが、別の誰かにとって価値あるものになる。この循環が生まれる場を作ることが、私にとってのファシリテーションです。

目指したい状態としては「全員ファシリテーション」や「全員アイドル」と言い換えられるかもしれません。誰もが誰かの「推し」になれる関係性。自分のこだわりを持って誰かを応援し、同時に別の場面では誰かに応援される。ファシリテーションをポテンシャルを引き出すことと定義するとき、それは現代においては「応援」と捉えても良いのではないかと考えました。

「自分は何アイドルか?」という問いは、「どんなこだわりで誰を応援できるか?」という問いです。技術、美的感覚、プロセス。どんなこだわりも誰かにとって必要なものになりうる。自分のこだわりを表現することは誰かを応援することにつながり、誰かのこだわりに触れることで自分も応援される。組織やチームにおいてファシリテーションを考えることは、この相互応援関係について考えることになるかもしれません。

音楽的な態度で向き合う

「分からないを楽しむ」という音楽的態度は、ファシリテーションにも活かせます。正解から解放されることで、より豊かな対話が生まれる。相互応援関係は、お互いのこだわりを発見し、必要とし合うプロセスです。音楽のように明確な目的がなくても成立し、むしろ目的から解放されているからこそ予想もしなかった価値が生まれる。

ファシリテーターとして正解に向かうのではなく、「分からなさ」と共に問いを深めていく。それぞれのこだわりが交差する瞬間を待つ。この音楽的な態度こそが、真の相互応援を生み出すのではないでしょうか。

私たちは皆、何かのアイドルであり、同時に誰かのファンでもある。応援し合うことで生まれる自己肯定感が、ポテンシャルを引き出す鍵なのかもしれません。


本書の著者であるヤマモトショウ氏が作詞/作曲・プロデュースするアイドルグループ fishbowl の楽曲が素敵なのでぜひ聴いてもらいたいです。これからも応援しています。