抽象度をつなぐミドルマネージャーの役割

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抽象度をつなぐミドルマネージャーの役割

エンジニアリングマネージャー、プロダクトマネージャー、そして様々なチームリーダーとして働く私たちミドルマネージャーには、共通する重要な役割があります。それは、個人の関心と組織の目標、そして社会的価値を如何につなげるかという問いと向き合うことです。

チームメンバーそれぞれが持つ好奇心や成長意欲は貴重な資源です。しかし、それらが必ずしもプロダクトの成功や組織の目標と直結するわけではありません。一方で、市場や顧客起点の視点だけでプロダクト開発を進めても、メンバーのモチベーションや創造性を十分に引き出せない可能性があります。

日々のマネジメント実践の中で、チームの成果と個人の成長の両立について様々な議論が生まれます。そうした経験を通じて、改めて個々のこだわりと組織の価値をどうつなげるかについて考えました。

異なる抽象度レベルでの「成功」

例えば、同じ野球というゲームをしていても、どのようなゲームと捉えているかはチームや個人レベルで異なります。

「打率を上げたい」「新しい球種を覚えたい」「仲間と楽しい時間を過ごしたい」といった個人としての成功基準や満たしたい欲求がある場合もあれば、それがチームの勝利や観客の感動、球界全体の発展につながることを成功の基準とする場合もあります。

重要なのは、自分がどの抽象度レベルで価値を創造しようとしているかを理解し、その責任を引き受けることです。ここでいう抽象度とは、個人の技術的関心から、チーム成果、さらには社会的価値まで、どの範囲の影響を考えて行動しているかの違いを指します。

そして、チームや組織においては、メンバーそれぞれが異なる関心や認識を持つことは必然であり、この認識の違いが、ミドルマネジメントの役割を複雑で困難なものにしています。

不確実性と向き合うために

このような多様な関心を持つチームで、プロダクト開発において市場にインパクトを与えようとすると、必然的に不確実性と向き合うことになります。これは確かに困難を伴うものです。しかし、この困難と向き合うことの重要性を理解する必要があります。

不確実性を避けて既知の作業だけを繰り返すことは、短期的には楽かもしれません。しかし、長期的に見ると様々なリスクを伴います。個人は成長機会を失い、スキルが陳腐化する可能性があります。チームでは創造性が低下し、イノベーションが停滞する恐れがあります。組織全体では競争優位性を失い、社会に対しては価値創造の機会を逸してしまうことになります。

ミドルマネージャーの役割は、この不確実性に向き合うモチベーションを、チーム全体で共有できる形に変換することです。そのためには、個人のビジョンや使命感、好奇心と、組織が取り組むプロダクトの社会的価値を意味のある形で接続する必要があります。

このような変化の中で、AIによる生産性向上も私たちの働き方に大きな影響を与えています。技術的問題をますます機械に任せられるようになった結果、人間には高い抽象度での整合や対話が求められるようになってきました。

AIは具体的で定型的、データドリブンなタスクの処理を得意とする一方で、人間は抽象的思考、文脈理解、価値の整合、創造的対話といった領域で価値を発揮します。

極端に言えば、今後人間に残される仕事は「めんどくさくて複雑」なものが中心になるかもしれません。だからこそ、自分のことを深く知り、個人の関心や創造性を活かせる形で仕事と整合させることがより重要になってくるのです。

これまでの話を踏まえると、AIにマネジメントを任せることを考える場合、関心の抽象度をつなぐことがAIにできるのかという問いを検討する必要があると言えるでしょう。この点についても、今後深く考えていく必要がありそうです。

ミドルマネージャーとしての課題と機会

多くの人は、キャリアの様々な段階で特定の業界やプロダクトに対する関心の変化を経験します。新しいチームへのオンボーディング時、異なる領域への配属時、あるいは時間の経過とともに興味関心が変わることは自然なことです。人は常に同じ状態ではなく、成長や環境の変化に伴って動機や価値観も変化していきます。

ミドルマネージャーの重要な役割は、異なる抽象度レベルの関心を橋渡しすることです。

個人の関心という低い抽象度では、新しい技術への好奇心、スキル向上への意欲、仕事を通じた成長実感といった要素があります。チームの目標という中程度の抽象度になると、プロダクトを成功させること、チーム全体としての成果を上げること、そして協働の質を向上させることが重要になります。さらに社会的価値という高い抽象度では、ユーザーの課題を解決し、業界や社会に貢献し、未来への価値を創造することが求められます。

この橋渡しを効果的に行うためには、まず個人の興味から始めて、それがどのように大きな価値につながるかを一緒に探る対話が重要です。また、新しい挑戦を通じて個人の成長とプロダクトの価値向上を同時に実現できる機会を設計することも必要です。そして、不確実性を受け入れながら継続的に学習できる環境を整えることが求められます。

おわりに

ミドルマネージャーとして、私たちは様々な問いと向き合う必要があります。個人の好奇心と社会的価値を意味のある形で接続するにはどうすればよいか。多様なメンバーの成長を支援しながら、組織全体の価値創造をどのように推進していくか。変化する時代において、人間にしかできない価値創造とは何なのか。そして、異なる抽象度レベルでの成功をどのように統合して評価するのか。

これらの問いに絶対的な正解はなく、外部環境や組織の状況、個人の成長などにより絶えず変化していくものです。だからこそ整合を諦めずに試行錯誤を続けること、続けられる環境や文化づくりが大切だと思います。