先日、MIMIGURI社内でファシリテーターの和泉さん主催のワークショップデザイン(WSD)勉強会を開催しました。ワークショップ設計についての講義を受けたあとに最終的に参加者それぞれが3〜5時間のワークショップを設計し、相互にフィードバックし合うという内容でした。私は「推しのデザイン」というワークショップを設計してみたのですが、そこで興味深い気づきがありました。
ワークショップを設計すると、設計者の「レンズ」が思った以上に強く反映されるのではないでしょうか。そして、そのレンズの違いに気づき、他者の視点を借りることで、より豊かな学びの場が生まれるのかもしれません。
なぜ「推し活」をテーマに選んだのか
最近書いた記事でも「ファシリテーションとは相互応援なのではないか」という仮説を立てて、その仕組みを作れるようになりたいと考えています。
もしこの仕組みを分析できれば、組織や共同体における相互応援の仕組みも作れるかもしれない。そんな問いを抱えていた時に、ワークショップデザインの機会が訪れました。自分の知りたいことをテーマにしてみるのも面白いのではないか、と考えたのです。
学習目標への偏愛
私が設計した「推しのデザイン」は、視聴者が推せるようになるための実況中継UIを創るというワークショップでした。将棋やスポーツの実況画面を分析し、「推し活」に必要な情報デザインのパターンを見つけ出す。そして、そのパターンを使って新しいUIをデザインする。

振り返ってみると、「推せるようになるためのパターン」が見つかれば、私の中では目的の8割は達成していたように思います。創る活動については、あまり試行錯誤しませんでした。学習目標さえ魅力的なら、参加者もきっと楽しんでくれるだろうと考えていたのです。
「楽しくないと嫌だ」という声
グループでの相互フィードバックで、こんな意見がありました。
「創る活動が楽しくないと嫌だ」
この言葉を聞いて、自分の前提が揺らいだ感じがしました。私にとっては「なぜこのワークをするのか」が分からないことの方がストレスで、創る活動の楽しさはそこまで重要ではなかったからです。でも、私のグループではこの意見が多数派でした。
その場で話を聞きながら、ひとつの問いが浮かんできました。「私の考えたワークショップは私にとっては楽しい。でも、参加者にとってはどうだろうか?」
レンズの違いを認識する
同じ事象を見ても、エンジニアとデザイナーでは異なる解釈をすることがあります。それは、それぞれが持つ職能の「レンズ」―知識、経験、価値観―が異なるからではないでしょうか。
ワークショップ設計にも、同じことが言えるのかもしれません。
私のレンズは「学習欲」でした。Strengthsfinderでも指摘されていた特性が、設計に反映されていたようです。普段のエンジニアリングでも、同じものを作ったり同じ方法で作るのは好きではありません。新しいフレームワークやツールを試すために何かを作る。そんな傾向があることに気づきました。
一方で、他の参加者のレンズは「相互理解」や「創作の楽しさ」に向いていたのではないでしょうか。
異なるレンズを活かす設計へ
相互フィードバックの際に「Hard Fun」という概念を教えていただきました。個人の力では乗り越えられない課題を設定することで、参加者同士の協力が生まれ、そこに楽しさも加わるという考え方です。
振り返ってみると、私の「推しのデザイン」は1人でも完結できる内容になっていました。複数人でないとできない創る活動にすることで、参加者同士の対話や協力が生まれ、より豊かな学びの場になったのではないでしょうか。個人では思いつかない視点や、チームだからこそ生まれるアイデア。そういった要素を設計に組み込めていなかったことに気づきました。
もし同じテーマでもう一度設計するなら、創る活動をもっと参加者が楽しめる形にしたいと思います。推しに至るまでのストーリーを物語にして演じてもらうなど、参加者の顔を思い浮かべながら、「この人たちが楽しめるか」を問い続けることが大切なのかもしれません。
設計者として学び続けるために
今回の経験から、いくつかの学びを得ました。
まず、自分のレンズを自覚すること。 私は学習目標にワクワクするタイプですが、それは私の特性であり設計における正解や原則ではないということに気づきました。
次に、他者の視点を積極的に借りること。 プログラム設計の段階で多様な視点からフィードバックをもらい、実際に創る活動を一緒に試してみる。そうすることで、より多くの人が楽しめるワークショップになるかもしれません。
そして、実践と振り返りを重ねること。 ワークショップの現場では、参加者と一緒に学ぶ姿勢を忘れずにいたいと思います。
良いワークショップは、設計者と参加者の数だけ存在する。大切なのは、自分のレンズだけで世界を見ないこと。他者の視点を借りながら、参加者と一緒に学びの場を創っていきたいと思います。
ワークショップデザインについてより体系的に学びたい方には、CULTIBASEのラーニングパス「ワークショップデザイン論[初級]」がおすすめです。今回の勉強会でも参考にさせていただいた内容が、わかりやすくまとめられています。
