自分らしいリーダーシップとファシリテーション

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自分らしいリーダーシップとファシリテーション

先日、メンバーとの1on1で「リーダーシップとは何か?」という話題になりました。

私たちの組織では「シェアドリーダーシップ」や「全員発揮のリーダーシップ」、「オーセンティックリーダーシップ」といった考え方を大切にしています。しかし、改めて「リーダーシップとは何か」と問われたとき、私は明確に答えることができませんでした。リーダーシップという言葉の定義は曖昧で、複雑な概念だと感じたからです。

さらに、メンバーが「リーダーシップ発揮を求められている」と言われたとしても、具体的に何をすればいいのか。「自分らしいリーダーシップ」とは何なのか。そこに至るまでには、まだ距離があるように思えました。どのようなステップを踏めば、自分らしいリーダーシップが発揮できるようになるのか。この問いを、メンバーと一緒に考えてみたいと思いました。

そこで、CULTIBASEの動画「リーダーシップ教育の最前線を俯瞰する」(舘野泰一さん)を見て、自分なりに言語化してみることにしました。

「リーダーシップ教育の最前線」を俯瞰する

リーダーシップとは何か?その共通要素を探る

舘野さんの動画では、まず「シェアド・リーダーシップ」という考え方が紹介されていました。これは「リーダーシップがチームメンバーに分散され、複数のメンバー間で相互に影響力が発揮された結果生じるチームの状態」(Carson, Tesluk & Marrone, 2007)と定義されています。

つまり、リーダーシップとは特定の誰かが持つものではなく、チーム全体で発揮されるものだという考え方です。しかし、「全員がリーダーシップを発揮する」と言われても、具体的に何をすればいいのでしょうか?

舘野さんは、リーダーシップの最小3行動として、以下を挙げています:

  1. 率先垂範:まず自分が動き、その姿が他者の模範となる
  2. 同僚支援・環境整備:周りのメンバーが生きる環境を作る
  3. 目的設定・共有:登るべき山(ビジョン)を定め、周りを巻き込む

この3つは、リーダーシップのスタイルや状況に関わらず、共通して求められる要素だと言えます。まずは、自分がこの3つを実践できているかを振り返ることが、リーダーシップを考える第一歩になるのではないでしょうか。

そして、この3つを、どう自分らしく実践していくか。それが「自分らしいリーダーシップ」に繋がっていくのだと思います。


「全員発揮」と「自分らしさ」の落とし穴

「全員がリーダーシップを発揮する」というのは理想的に聞こえますが、動画では、この考え方が抱える落とし穴についても指摘されています。

一つは、リーダーの責任逃れとメンバーの好き勝手による共犯関係です。「みんなでやろう」と言いながら、実際には誰も意思決定せず、結果的に動けなくなってしまう。あるいは、「全員発揮だから」という名目で、各自が自分のやりたいことだけをやってしまう。

もう一つは、個人利益の最大化に陥りがちだということです。「自分らしいリーダーシップ」を追求するあまり、組織やチームの目線が抜け落ちてしまう。結局、「組織としてどこに向かうべきか」ではなく、「自分が何をやりたいか」が優先されてしまうのです。

「自分らしさ」の罠

同様に、「自分らしさ」という言葉にも注意が必要だと指摘されています。

「自分らしいリーダーシップ」を見つけようとするとき、私たちはつい「自分軸」や「価値観」といった言葉にこだわりすぎてしまいます。しかし、自分が決めた枠に囚われてしまうと、かえって柔軟性を失ってしまうこともあります。

また、「自分らしさ」は必ずしも一貫している必要はなく、働く環境や一緒に働く人によって変わることもあるはずです。にもかかわらず、「これが自分らしさだ」と固定してしまうと、状況に応じた適応ができなくなってしまうのではないでしょうか。

落とし穴を避けるために必要なこと

では、これらの落とし穴を避けるためには何が必要なのでしょうか。

動画では、組織理解・他者理解・自己理解の3つが揃う必要があると示されています。

  • 組織理解:組織やチームがどこに向かおうとしているのか
  • 他者理解:一緒に働くメンバーが何を大切にし、何を目指しているのか
  • 自己理解:自分が何に興味を持ち、何に価値を感じるのか

この3つの理解があって初めて、「自分本位にならない、自分らしいリーダーシップ」が発揮できるのだと思います。


3つの理解を深めるために

では、この「組織理解・他者理解・自己理解」を深めるために、プロダクト開発の現場では何ができるでしょうか。

私たちのチームでは、プロダクトのビジョンやミッションについて対話する場を設けたり、半期ごとの目標設定を共有してお互いの意味付けを理解したりしています。また、各スプリントイベントについてメンバーがオーナーシップを持つことで、自分の好奇心を発揮しやすい場づくりを試行錯誤する機会を作っています。

こうした取り組みにより、「プロダクトとしてこうしたい」という共通言語ができ、個人のやりたいことをプロダクト価値に紐づける形で意味づけできるようになっています。つまり、「個人がやりたいからやっている」のではなく、「プロダクト開発チームとして意味のあることをしている」という状態です。

では、この状態を前提としたとき、「自分らしいリーダーシップ」とは何を意味するのでしょうか。


リーダーシップとは何か

ここまでの議論を踏まえて、私は次のように考えます。

リーダーシップとは、その環境の中での「自分らしさ」を見つけて、自身の振る舞いと環境(ルールや制約)をアップデートし続けることではないでしょうか。

これは、最小3行動のすべてに関わっています。

  • 率先垂範を自分らしく実践する → 自分の好奇心を起点に動く
  • 同僚支援・環境整備を自分らしく実践する → 好奇心が価値に変わる環境を作る
  • 目的設定・共有を自分らしく実践する → 価値仮説を立てて巻き込む

なぜ「振る舞いと環境の両方」なのか。それは、個人の好奇心をただ自由に発揮するだけでは、動画で指摘されていた「個人利益の最大化」や「好き勝手」に陥ってしまうからです。

一方で、組織の目標やルールに従うだけでは、「自分らしさ」が失われてしまいます。

だからこそ、自分の振る舞いと環境の両方をアップデートし続けることが必要なのです。

好奇心を価値に変える仮説を立てるとは

では、「自分らしさ」とは具体的に何でしょうか。私は「好奇心が価値に変わる仮説を立てる」というプロセスに注目しています。

これには2つの段階があると考えています。

第一段階:好奇心に蓋をしない

まず、自分の好奇心や衝動を素直に認めることです。例えば、「この技術が気になっている」という感覚があったとき、「でもプロダクトとしては必要ないから」と最初から諦めてしまうのではなく、まずはその好奇心を大切にする。趣味で触ってみるでもいいし、チームに「こんなのが気になってる」と共有するでもいい。

第二段階:価値に変える仮説を立てる

次に、その好奇心をプロダクト価値に繋げる仮説を立てることです。「プロダクトとしてこのような価値(ユーザー価値やビジネス価値)があると考えるので、この技術を導入してみるのはどうか?」と問いを立てられるかどうか。

なぜ「好奇心が価値に変わる」ではなく「仮説を立てる」なのか。それは、価値検証をするためには、まず自ら仮説を立てられることが必要だからです。

3つの理解が前提となる

この「自分らしさを見つけて、振る舞いと環境をアップデートする」というリーダーシップは、動画で示されていた「組織理解・他者理解・自己理解」の3つを前提としています。

組織がどこに向かおうとしているのか、他者が何を大切にしているのか、自分が何に興味を持っているのか。この3つを理解した上で、自分の好奇心をプロダクト価値に繋げる問いを立てる。

そして、その問いを立てやすい環境、つまり「好奇心を語れる場」「仮説を検証できる仕組み」「価値を共有できる言語」を作っていく。これが、自分本位にならない、自分らしいリーダーシップの発揮なのではないかと思います。


リーダーシップへの段階的なアプローチ

冒頭で書いた1on1での問い、「リーダーシップとは何か」「自分らしいリーダーシップにどうやって至るのか」に対して、私なりの答えをまとめます。

第一段階:最小3要素を振り返る

まずは、リーダーシップの最小3行動(率先垂範、同僚支援・環境整備、目的設定・共有)ができているかを振り返ることです。ここが共通の基盤となります。

第二段階:3つの理解を深める

組織理解・他者理解・自己理解を深めるための仕組みを作ることです。プロダクトのビジョンやミッションについて対話する場、目標設定を共有する場、メンバーがオーナーシップを持てる場。こうした場を通じて、「個人利益の最大化」の落とし穴を避けることができます。

そして:3要素を自分らしく実践する

その上で、最小3行動を自分らしく実践していく。自分の好奇心を起点に動き、好奇心が価値に変わる環境を作り、価値仮説を立てて巻き込む。そのために、自身の振る舞いと環境(ルールや制約)をアップデートし続ける。

これが「自分らしいリーダーシップ」の発揮なのではないでしょうか。

全員発揮とは、全員ファシリテーションである

ここで、冒頭の「全員がリーダーシップを発揮する」という話に戻りたいと思います。

なぜ「自分らしく」実践することが重要なのか。それは、最小3要素を機械的にこなすだけでは、その場その場で適切な判断や設計ができないからです。

例えば、「同僚支援・環境整備」をするとき、どんな場を作ればメンバーが生きるのか。「目的設定・共有」をするとき、どう伝えれば相手に響くのか。これらは、組織理解・他者理解・自己理解があって初めて、自分なりの判断と設計ができるようになります。

自身の振る舞いを変えるにも、環境を変えるにも、それは連続した一つ一つの場の設計にかかっています。会議での発言の仕方、レトロスペクティブの進め方、1on1での対話の持ち方。こうした日々の場面で、どう振る舞い、どう場を設計するか。

つまり、全員でリーダーシップを発揮している状態とは、全員でファシリテーションしている状態と同義なのではないでしょうか。

そして、自分らしいリーダーシップスタイルとは、自分らしいファシリテーションスタイルということができるのかもしれません。